様々なメモ

所有古書(保育関係)のリストの公開について
 

趣味と実益を兼ねて、幼稚園・保育所関係の古書を収集しております。まだ数は少ないですが、徐々に増やしております。

保育関係古書アーカイブ

こちらのサイトからご覧ください。

 

すべり台や砂場はいつから園にあるのか?

授業の中で、園にある屋外遊具に触れることはままあるのですが、ふと、これらの屋外遊具はいったいいつからあるのだろうか、という素朴な疑問から、少し調べてみました。とりあえずは、砂場とすべり台にフォーカスです。

砂場の歴史は、笠間(2013)が詳しいです。この論文から、最初の幼稚園、東京女子師範学校附属幼稚園には、砂場はないものの、明治20-30年代ぐらいから増えていったようです。アメリカのボストンで1885に初めて設置され、それが日本に輸入された形のようです。当時のアメリカでは、playground運動が広がり、それが伝播したようです。

一方、すべり台は、雑誌の発達に「すべり台の歴史」が3回連載されていました。すべり台も、やはり最初の幼稚園には設置されていません。すべり台も、アメリカのplayground運動の中で、1900年代初期に存在は確認され、日本には1911年に、日本初の民間児童遊園に設置されたのが最初のようです。それが日本の園にどういう形で広がっていったのかはまだまだ明らかになっていないようです。

恐らく、すべり台、砂場だけではなく、ブランコやシーソーといった屋外遊具は、アメリカのplayground運動に大きく影響を受けているようです。こういった、保育文化史を見ていくのも、なかなか面白いですが、資料をどうあたるかのスキルがそうとう重要なようです。しかし、論文を読んでいる中で、遊動円木なる遊具の名前が出てきて、「?」となっていましたが、こういうのですね。

https://www.google.com/search?q=%E9%81%8A%E5%8B%95%E5%86%86%E6%9C%A8&safe=off&client=safari&rls=en&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwiDxPqEmMziAhUKfnAKHVV8C_kQ_AUIECgB&biw=1953&bih=1275

そういえば昔はありましたが、今はみなくなりました。箱形ブランコと同じく危険性から撤去されているのでしょうか。

笠間浩幸 2013 砂場の保育文化史的考察 子ども学1 118-137

田実知子・橋彌和秀 2010 すべり台の歴史 公園のすべり台 発達31(124) 106-112

田実知子・橋彌和秀 2011 すべり台の歴史 幼稚園のすべり台 発達32(125) 106-112

田実知子・橋彌和秀 2011 すべり台の歴史 すべり台のある風景 発達32(126) 106-112

ジャングルジム(枠登り)の起源

授業用の小ネタとして。保育文化史、ジャングルジムです。

ジャングルジムの起源自体は、Wikipediaにありました。1920年にシカゴの弁護士、Sebastian Hintonによって考案されたもののようです。Jungle gymは商標登録なので、海外でもmonkey barsと呼ばれたりするようですね。ちなみに、考案者のHintonさんのお父さんは、数学者で4次元体の研究をしていたようです。その当たりがヒントになっているのかもしれません。

日本にいつ入ったのかは、もうちょっと調べないとわかりませんが、少なくとも1927年の「幼児の教育」にその写真がありました。震災後、設置されたのでしょう(が、ちょっと堀七蔵の「教員生活70年」が近場にないので、詳しくわかりません…)。

しかたないので、堀七蔵が書いた「幼児の教育」を辿ってみました。1930年の30(8)号、「幼児の運動遊戯(3)」に次のような記述がありました。

「遊戯室は大抵の幼児がではらって、シーソーのところに女児が1人、枠登りに女の児が2人いるばかりである。」「わくのぼりには年長児男三人女四人がのぼったり下りたり、また金魚鉢の所に行ったりしている。」

この論文では、幼児の自由遊びを観察したものを書いているのですが、大型遊具としては、ブランコ、すべり台、シーソー、わくのぼり、小山、と、今ある物はすでにこのころからありますね。

「ぶらんこの使い方を指導せず、すべり台のすべり方を指導せずして、「あぶないからいけない、もっと静かに遊びなさい。そんなお転婆はいけない」などと、叱責することは禁物である」(幼児の運動遊戯(4))
というのは、今にも通用しそうです(笑)